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最高裁判所第二小法廷 平成元年(行ト)2号 決定

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告代理人尾藤広喜の抗告理由について

憲法三二条は、何人も裁判所において裁判を受ける権利のあることを規定するが、いかなる裁判所において裁判を受くべきかの裁判所の組織、権限、審級等については、すべて法律において諸般の事情を考慮して決定すべき立法政策の問題であつて、なんら憲法の制限するところではないと解すべきことは、すでに当裁判所大法廷判決の判示するところである(昭和二三年(れ)第二八一号同二五年二月一日判決・刑集四巻二号八八頁)。したがつて、行政庁を被告とする取消訴訟の管轄を定めた行政事件訴訟法一二条の規定及び同条所定の管轄を有する東京地方裁判所への本件移送決定を相当とした原決定が憲法三二条に違反するものでないことは、右判例の趣旨に徴して明らかである。また、所論は、憲法一三条、二五条違反をいうが、右違憲主張はいずれも、右に述べた立法政策の当否をいうものにすぎず、失当というべきである。論旨は、いずれも採用することができない。

よつて、本件抗告はこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 香川保一 裁判官 牧圭次 裁判官 島谷六郎 裁判官 藤島昭 裁判官 奥野久之)

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